【インド人の仕事の流儀】インドの日本人女性駐在員から仕事の本音を聞いた話

インド編

 これは名前を聞けば誰もが知る某超大手企業Y社のインド支店に勤めている日本人女性から聞いた興味深い話です。

 彼女と僕との出会いは親の紹介でした。

 僕の両親(特に父親)はインドが大好きでインドによく行っていた時期があるのですが、その時に彼女と知り合ったのだそうです。

「インドにいるなら彼女に会ってみろ。面白い人だから」

 あの偏屈な父親に友達がいたことに僕は驚き、一体どんな人が僕の親父と友達になってくれたのだろうと興味津々で合うことを決めました。

 

 インド人を雇って仕事を上手く勧められたら経営者として一流という話を聞いたことがあります。これはインド人の扱いはとても難しいので彼らと上手くやっていければどんな人とも上手くやっていけるという事です。しかし、「インド人」として人格を固定して考えることは視野が狭いし、皮肉としてはナンセンスだと思います。

 それを踏まえた上で今回のお話をご紹介したいのです。

 

 インドはとても広い国で、またとても深みのある国でもあります。都市毎にその特徴や性格が変わり、まるで別の国かのようにその雰囲気も人々も彼らの生活も異なっています。

 彼女が住んでいたのは南インドのある大都市でした。エリアによっては比較的裕福な人たちが多く、外国からの企業が集まってくるような近代都市です。

 僕らはメールで連絡を取り合い、彼女の家の近くのカフェで待ち合わせをすることにしました。

 彼女は外見的にも内面的にもとても魅力的な女性で、どこか東南アジアを思わせる日本人離れした雰囲気を持っていました。

「よくタイ人に間違われるのよね。タイの血なんて入ってないはずなんだけどなあ」

 不満気に話す彼女でしたが、長年バックパッカーをしていた経験もありタイも大好きだと言っていました。

 

 その後僕は彼女のお家にお邪魔させてもらい、2日間ほど部屋を貸してもらいました。その家がまた驚きで、2階建ての正に豪邸でした。

 僕は思わず言いました。

「インドにもこんな家があるんですね。このエリア一帯僕の知っているインドじゃありませんよ。全てが綺麗すぎます」

「会社が家を支給してくれるんだよね。別に1人だからこんなに広い必要もないんだけど」

 彼女は肩をすくめてやれやれという風に笑っていました。

 貧乏旅で汚い安宿にしか泊まってこなかった僕にとってそこは天国のような環境でした。温かいシャワーも1ヵ月以上ぶりでした。

 彼女の旅の話もかなり面白かったのですがかなりグレーな話も多いため、今回はタイトル通りインド人と働く事について彼女の意見をご紹介しようと思います。

 

「違うわよ!そっちじゃなくてあっちだって言ってるでしょ!!」

 専属の運転手に向かって彼女は深くため息をつきました。

 彼女の家の前にはいつも一台の車が止まっており、専属のドライバーがすぐにどこにでも行けるように待機しています。この専属ドライバーも豪邸とセットなのだそうです。

 僕と話すときとは違う冷たく高圧的な態度に驚いていると、それに気づいた彼女は目をそらして笑いました。

「こうしなきゃいけないのよ、疲れるんだけどね……」

 彼女曰く、インドではボスはボスらしく振舞うことが要求されるのだそうです。その「ボスらしい」というのは「お金持ちで、偉くて、厳しくて、尊敬できて、近寄りがたい」みたいなイメージで、分かりやすくそれをみせるにはある程度偉そうに振舞う必要があるのだといいます。

「前は部下にも結構優しく接していたのよ。仕事を手伝ってあげたりとかね。でもみんな混乱しちゃうの。ボスらしくないと思われて舐められたり、理解されないとコミュニケーションにも支障が出るのよ。特に女性の上司っていうのはここでは珍しい存在だから余計にね。ボスにはボスの仕事が、自分たちには自分たちの仕事があってそれが入り混じることが理解できない子たちが多いのよ」

 会社がインドにできたばかりの頃、それはもう大変だったといいます。

「オフィスの掃除をしようとなった時が最大の混乱を招いたわね。自分のオフィスくらい掃除してもいいじゃない? でもね、彼らは頑なに掃除をしようとしないの。みんなすごく優秀で仕事のできる子たちだけど、上司である私たちが言って聞かせても『それは僕たちの仕事ではない』と耳をかさないのよ。それを見かねた社長がね、雑巾で床を拭いて掃除し始めたのよ。オフィス内がどよめきに包まれたわね、悲鳴も聞こえて中には泣き出す子もいたのよ。大袈裟だと思うでしょ? まじなのよ」

 まじらしいです。彼らは彼らの仕事しかしないのです。しかしその仕事ぶりは相当なものらしく、なんだかプロという感じがしないでもないですよね。

 

 僕はそれを聞いて、以前インドで出会った旅人の言っていたことを思い出しました。

「インド人は決して仕事がなくなるってことはないんだぜ。この食堂には料理を作る人がいるだろ? 他にも料理を運ぶ人、皿を拭く人、注文を取る人、取り皿も持っている人、ご飯をよそって回る人、そんな感じでめちゃたくさんの役回りがあるわけ。日本だったら全部1人でやるようなことも分担してるもんだから何かしらの仕事にはありつけるんだ」

 全然信じていませんでしたが、なんだかそれも本当のことのような気がしてきました。インドと一口に言っても場所によって全然違いますからなんとも言えませんが、確かにやたら店員の多い食堂はたくさんあります。

 

 話が逸れましたが、とにかく彼女は会社やインド人の部下の前ではわざと偉そうに振舞ったり、横柄な態度をとってみせたりするそうです。

「疲れるわよー演技してるわけだからね。同じ日本人の職員に見られると恥ずかしいし……。でもむかつくのが、何にも状況を知らない日本人ね。インド人を相手に威張り散らしてるとか陰で言われたりするんだけど、こっちだって好きにやってるわけじゃないのよ」

 僕は思いました。多分僕も、もしインドでインド人に偉そうな日本人を見かけたら「この人はなんで現地の人にリスペクトできないんだろう。日本人だからって別に偉くも何にもないのに」と思ってしまう。

 どんな事にも表の面と裏の面があるのだと学べました。

 

最後に

 彼女がいまどこで何をしているのかは分かりません。最後に近況を聞いた時は、Y社を退社してインドでサドゥー(インド仙人みたいな人)を追いかけて山奥に行ったとのことでした。またいつかどこかで再開したいものです。

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