インドを西回りで縦断していた時の話です。
主な移動手段は列車で、たまにバスも使って陸路移動で旅をしていました。毎日移動してばっかりというわけではなく、のんびりと色んな町に泊まって気が向いたら場所を変えるような気ままな毎日を送っていました。
当時の僕は中々原始的な旅の仕方をしており、スマホこそ持っていましたがSIMもいれておらず、ホテルのブッキングサイトも使っていませんでした。日本で買ったスマホは別の国で盗まれてしまったので、持っていたのは中古の画面バキバキのiPhone4sで、バッテリーのもちが絶望的でした。
インターネットを駆使した現代的な旅をすることが物理的にやりにくく、必要な時にマップを使うくらいしかスマホを使っていませんでした。
その日僕は、ジョードプルという町からウダイプルという町まで移動しようと列車のチケット売り場にいました。
インドに詳しい人なら知っているかもしれませんが、ジョードプルからウダイプルまでは列車が続いていません。しかしそんな情報は当時ネットになかった、もしくはちゃんと調べていなかった僕は、有名な町までは全部列車で行けるものと思っていたのです。
とりあえず駅に行き、ウダイプルに行きたいからチケットをくれと言いました。もしそこが日本なら、「お客様、ウダイプルまでの列車はございません。バスをご利用下さい」くらいは言ってもらえたでしょう。しかしそこはインド、何故か発券されたのです。
聞き返されることもなく、ノータイムでチケットを渡されたので疑うことなく列車に乗り込みました。インドの列車には車両毎に等級があり、僕はいつも1番下のジェネラルという自由席のチケットを買っていました。
他の等級は乗ったことがないので分かりませんが、ジェネラル車両では必ずと言って良いほど話しかけられます。道端で話しかけられるのとは訳が違いますから、気分が乗らなくても無視したりぞんざいに対応したりすることは出来ません。ガッツリ何時間も現地人たちの好奇心を満たし続けることもありました。
もちろんその時も何人かのインド人たちと仲良くなり、「これからウダイプルに行くんだよ〜」という話もしました。その際も特に何のツッコミもなく、「へーウダイプルに行くのか〜」くらいの返答でした。
僕が異変を感じ始めたのはふとスマホの地図を確認した時でした。ちなみにですが、Wi-FiやSIMがなくてもスマホのGPSは使えるので地図アプリは使用できるのです。
地図を見ると、明らかに現在地がウダイプルを通り越しつつあったのです。僕は慌てて周りのインド人にアンケートを取り始めました。
インドで道やモノを尋ねる際にはアンケートを取るようにしていました。数人の答えを聞いて、1番多かった答えに信憑性があります。
アンケート結果は、「このまま乗っていれば着く」×1票、「次の駅で乗り換える」×2票、「さっきの駅で乗り換えるべきだった」×4票、みたいな感じでした。
仕方ないので次の駅で降りて、バスを探すことにしたのですが、その降りた駅がめちゃさびれた感じだったのです。
人はほとんど降りず、かなり田舎にやってきてしまったなあという感じでした。スマホのバッテリーは底をつきかけており、ウダイプルまでのバスを見つけるか充電場所を探すかの2択でした。
駅の外にはスタバやマックはもちろん、ほとんどお店やレストランは見当たりませんでした。充電は諦め、駅員にバス停の場所を教えてもらいました。バス停は割と大きくて、人もまばらにいたので少し安心しました。
適当にバスに乗り込んで、ウダイプルにまで行くのか尋ねて回り、お目当のバスに腰を下ろしました。スマホのバッテリーは底をつきましたが、周りの乗客もみんなウダイプル行きだと言っていたので安心していました。
しかし、たどり着いたのはウダイプルではなかったのです。わけの分からない田舎道で降ろされ、そこが終点だというのです。既に日が落ちかけており、流石に焦りを感じ始めてきました。
運転手を責めても仕方ないし、正直なところ僕はバスがウダイプルに向かっていないことを薄々感づいてもいたのです。何故ならウダイプルは割と大きな町であるはずなのに景色はいつまでも田舎っぽいし、途中の駅で人々は次々降りて行くし、終点まで残っていたのは乗客は僕を含めて3人くらいになっていたからです。
僕は残っていた乗客の1人について行き、近くの町で宿を探すことにしました。
コジンマリとした町でしたが、レストランはいくつかあったので、適当に入ってビリヤニを食べました。店員さんにこの町にホテルはあるかと尋ねると、無いとのこと。
町の規模的に予測はしていましたが、野宿決定は移動疲れも手伝ってかなりキツかったです。
しかし、そのレストランではコンセントを貸してくれたので、充電して現在地を調べることが出来ました。場所はウダイプルよりも大分手前ではありましたが、一応は列車の駅からは目的地に近づいていたので少し安心しました。
とは言えとにかくこの町でどうにか一泊過ごさないといけません。せっかくなので、もう暗くなっていましたが町をぶらぶら観光してみることにしました。
しかしこれと言ってどうという特徴のない町で、すぐに住宅街みたいなところに出てしまいます。バックパックも肩に食い込み始めたので、とりあえず一息つこうとバス停に戻ってみました。
バスの事務所みたいなところはもう閉まっていたのですが、運転手らしき人たちが屋台でご飯を食べて談笑していました。
僕がトボトボと近くを通り過ぎると声をかけてきました。宿無し小僧であることを話すと、願ってもない提案をしてくれたのです。
朝一で出るウダイプル行きのバスに今から乗っていて良いと言うのです。感謝感謝で彼らにチャイを奢り、バスの後部座席に寝転がったのでした。
結局そのバスで目的地のウダイプルにまでたどり着くことができてハッピーエンドでした。
最後に
インドについての記事をいくつかまとめているのでコチラの一覧からどうぞ。
最後まで読んで頂きありがとうございました!