タイで騙そうとしてくる詐欺師から英語を学んでビールを奢ってもらった話

タイ編

 僕が旅を始めた当初、その英語力はほぼゼロと言っても過言ではありませんでした。文章を話すことはおろか、リスニングもほとんどできませんでした。英語での会話は基本的に「Yeah……」で済ませていました。今回は初めてのバンコクで早速詐欺師にカモと判断された僕が逆に彼から英語を学び、ビールまでご馳走になった経緯と、その詐欺の手口をご紹介します。

詐欺の手口

 先にその詐欺の手口からご紹介します。ちなみにこの手口は今でもたまに耳にするもので、海外に旅行へ行く際には必ず注意しなければなりません。全ては以下の通りです。

1、ATMを使わせる。

2、暗証番号を盗み見る。

3、カードを盗む、または奪い取る。

 こんな単純な手に引っかかる訳がないだろうと呆れる方もいるかもしれません。手口だけ見れば詐欺なんて案外こんなものなんです。オレオレ詐欺だって箇条書きにしたら

1、電話をかける

2、口座にお金をふりこんでもらう

となりますが、未だにその手口は廃れてはいません。

 このATMからお金を引き出す詐欺はタイだけではなく、マレーシア、モロッコ、インドでも被害に合ったという旅人に会いました。やり口は少しずつ違うものの、結局やろうとしていることは同じです。

 当たり前のことですが何があっても自分の暗証番号を他人に見られたり、教えるようなことは避けてください。どんなにニコニコな親切な優しそうな人でも、その人はあなたからお金を頂こうとしている詐欺師なのです。

経緯

 僕は初めてやって来たタイに興奮を隠しきれませんでした。バンコクのカオサンロードやその周りを練り歩き、1人でしたがその喧騒と異国感にテンションは爆発寸前でした。そして夜になると屋台やナイトマーケットが立ち並び、街はさらに賑やかになっていきました。

 屋台でご飯を食べ終え、そろそろ宿に戻ろうかと席を立つと後ろから肩を叩かれました。振り返ると背のグッと高いアジア人とアラブ人のハーフといった顔立ちの男が僕を見下ろしていました。180近い僕を見下ろしていたのでかなりでかく、人込みでも目立ちました。

「どっからきたんだ?」

「日本だよ」

「おー日本か!俺はマレーシアからきて……」

 英語最弱者だった僕は彼が何を話しているのか全く聞き取れません。かろうじてビジネスでタイに来ているマレーシア人ということだけはなんとか分かりました(多分)。

「ちょっと一緒にぶらつこうぜ。ビール奢ってやるよ!」

「え?……うん……(理解していない)」

 コンビニに入っていく彼を待ちながら、僕は頭の中を整理しようと必死でした。もちろん最初は警戒していましたが、彼は僕の拙い英語をなんとか理解してくれようと努め、会話してくれて、なんとビールまで奢ってくれるというのです。そしてこの後なんと、ビールを片手に道をぶらぶら歩き回ること2時間近く、最終的に彼は僕に4本もビールを奢ってくれました。彼ももちろん飲んでいましたが、お酒には強い様子で全く酔っぱらってはいませんでした。

 僕はそこまでビールが得意ではなかったので、彼の隙をついて地面にびしゃびしゃとこぼして捨てていました。彼がそれに気が付いた時、めちゃくちゃ怒られましたが僕がまともに英語を理解しないので、僕の言うしょぼい言い訳を呑み込んでいました。この時点で僕は彼が詐欺師なんだいうこと確信しており、酔いたくなかったので捨てていました。ビールを断ればいいじゃないかと今になって思いますが(今になって思えばついて行くべきではなかったです)、彼は矢継ぎ早に僕にビールを勧め、買い与え続けるので断れませんでした。そして僕が彼が詐欺師だと確信したやりとりがこちらです。

「お金はどうやって手にしているんだ?両替?ATM?クレジットカードは持っているのか?」

「持ってるけど……」

「ATMでキャッシングするときに手数料がタダになる方法を知っているか?」

「知らない」

「教えてやるからちょっとATM使ってみろよ」

 以上の会話です。なんだか文字に起こしてみると大分雑な詐欺に見えますが、それをやってのけるのですから恐ろしいです。騙される側がアホと言われるとそんな気がしてきちゃいますが、実際は詐欺師たちの話術はかなり達者なのです。ただ1つ今回この詐欺師に誤算があるとすれば、カモである僕の英語力が想像以上に低かったことだと思います。僕は必至で彼の言っていることを理解しようとしており、彼もなんとか信用を勝ち得たくて一生懸命伝えようとしてくれました。そして結果として2時間にわたり彼が僕にみっちりと英語を教え、さらにビールを奢り続けるということになったのです。

 彼が詐欺師だと確信した後も、僕は彼を振り切ることはしませんでした。人通りの少ないところには行かないように気を付けながら、僕の拙い英語を試したりしていました。最終的に彼は諦めて自分のホテルへと戻っていきましたが、僕は3、4回キャッシュカードをATMに入れることを促されました。

「You shoud not see my password(人の暗証番号は見るべきじゃないよ)」

 暗証番号を盗み見ようとする彼に僕は何度も言いました。頭の中で作り上げた文章をなんとか言葉にすることができたのですが、まさか自分がそんなセンテンスを使うことになるとは思いもしませんでした。お陰で僕は今もなおこの文章を覚えています(願わくば二度と使うことがありませんように……)。彼はそれに対して何かぶつぶつ言っていましたが、僕はそれを理解できませんでした。

 今考えると、大男の彼がそんな丁寧な詐欺に痺れを切らして襲いかかって来ることもあり得ました。危険なことに当時はお酒が入っていたのもあってか、おちょくっていたつもりでいたのです。

最後に

 詐欺の被害は旅をしていると非常によく耳にします。幸いなことに僕は詐欺で大きな被害にあったことはありませんが、何十万という金額を騙し取られた人にはたくさん出会いました。せっかくの楽しい旅行を台無しにしないためにも、海外ではいつも以上に少し気を張っておく必要があると思います。ちなみに長旅を続けるコツのようなものをコチラでまとめています。長旅であればあるほどトラブルのリスクは高まるので注意が必要です。

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