オーストラリアの高速道路で突然車がパンクした話

オーストラリア編

初めに

 僕はオーストラリアにワーキングホリデーで約1年ほど滞在していました。せっかく海外で仕事をするなら英語を使える環境で働きたいと思っていたのですが、僕の英語力ではその環境を手に入れるには少々厳しいものがありました。日本人経営の日本食レストラン(通称ジャパレス)のトライアル(アルバイトのお試し期間)に行ったりもしましたが、なんとなくしっくりきませんでした。海外にいるのに日本社会にいるみたいで面白かったんですけどね。

 僕はブリスベンというオーストラリアの第三の都市と言われる街にいたのですが、収入もないくせに街のど真ん中のマンションに部屋を借りていたので貯金がみるみると減っていきました。割と仕事探しに焦り始めた矢先、ある運送会社から連絡を頂きました。日系の会社で社員の半分は日本人でしたが、外国の地を車で走り回る経験は中々できるものじゃないと考えて働くことに決めました。

 

仕事

 アルバイトの僕の仕事内容は単純なもので、倉庫にある荷物を車に積み込んでお店やレストランに運んで周るというものでした。まずは倉庫にある商品を覚えるために、最初の1、2週間は倉庫整理の仕事を手伝います。かなり大きな倉庫でしたが、荷物をあちらこちらに運んでいるうちにどんなものがどこに置かれているのかを覚えていきました。

 商品は日本のお菓子やジュース、調味料、後はお弁当の容器や箸、スプーンなど多岐に渡ります。アイスクリームや冷凍食品も扱っており、巨大な冷蔵庫の中の作業は寒くて凍り付きます。

 ある程度商品を覚えたら次は助手席に座って先輩の仕事を手伝います。積み込んだ商品を順番にお店やレストランに運送するのですが、お客さんの9割は日本人ではありませんでした。

 朝の8時から夕方17時30分までの土日休み、残業した場合はその分の時間を使って早く帰宅したり遅く出社したりすることができました。仕事環境もかなり居心地が良く、社員の方々もワーホリで集まったアルバイトたちを大切にしている印象でした。結局丸5ヵ月働きましたが、特に生活を切り詰めることなく13000ドル(当時のレートで100万円くらい)を貯金することができました。

まさかの事態

 時が経ち、僕にも引き継ぎの時が訪れました。2週間ほど引継ぎの後輩を助手席に乗せ、あれやこれやと教えていきます。最後の方はほとんど運転も任せて僕は楽をしていました。

 季節は12月で、この時期が繁忙期に当たり、車に積み込む積載量もすごいことになっていきます。僕はハイエースやボンゴよりももう一回り大きいサイズのほぼ小型トラックのようなベンツを使っていましたが、荷物が邪魔でバックミラーが見えないくらいにパンパンに詰め込んでいました。

 特に忙しい日が訪れ、その日は僕が運転席に座って後輩には補助に回ってもらうことにしました。僕らの運送ルートは基本的にゴールドコーストというビーチとサーファーの街だったのですが、ブリスベンからは80キロほどあります。毎日1時間強のドライブをしてから荷物を配り始めるというルーティーンなので、大抵午前中は音楽を聴いたり雑談をしながら車を走らせています。

 その日もいつもと同じように後輩と雑談をしながら高速道路を走っていたのですが、不意にハンドルに違和感を覚えました。僕は一番右側の追い越し車線にいて、周りには他の車もたくさん走っていたので背筋がスッと冷たくなりました。

「ここで止まったら死ぬ。急ハンドルも死ぬ」

 100キロ以上出している大型車(しかも荷物パンパン)のハンドルが上手くきかないのです。雪や氷の上でスリップしているような感覚で、しかも何かを引きずっているかのようなガリガリという音が外から聞こえてきました。すぐにハザードランプを点け、異変を感じて凍り付く後輩越しにサイドミラーで周りの車を確認し、徐々に左に寄せて車を止めました。確認してみると後輪がズタズタにパンクしていました。

その後

 その後すぐに会社に連絡すると先輩が飛んできてくれました。先輩の乗ってきた車に荷物を移し、先輩とパンクした車を高速道路に残して後輩と配達先に急ぎました。後から聞いた話ですが、荷物が重すぎる上にある程度のスピードを出して走っているとタイヤがたゆんでしまいパンクすることがあるのだそうです。何かを踏みつけた感触もなかったので、おそらく原因は荷物を詰め込み過ぎたことだと思います。

 その後、車の中で後輩と

「先輩よくあんな冷静に対処できましたね。一歩アレだったら俺たち死んでましたよ」

「あたりめーだろ。俺はいつも冷静よ」

 みたいな会話をしましたが、そんなことを言いつつ実は内心めちゃくちゃパニクッていたのでした。おそらく日本の高速道路なら、場所によっては他を巻き込んだ事故になっていたんじゃないかなと思います。オーストラリアの高速道路は基本的に左に寄せて止められるスペースがあり、事故を起こした車はもちろん、休憩するためにとめている車もあります。一度、ビニールシートを広げてサンドイッチを食べている家族を見かけたこともあります。

色んな人がいます。

最後に

 オーストラリアでは仕事で車を運転していましたが、旅先でも隙あらばバイクや車をレンタルしてよくドライブしています。トラブルに出会うことも少なくありませんが、異国の地をドライブする気持ち良さやスリルはそのリスクを取る価値が十二分にあると思います。そしてそれらトラブルや失敗から学んだことをまとめて記事にしていますので下に置いておきます。最後まで読んで頂きありがとうございました!

タイトルとURLをコピーしました