世界放浪5年間で出会ったヤバい旅人ランキングベスト5

旅のノウハウ・etc

 僕は海外にいる日本人はみんな変人だと思っています。もちろんここで言う変人は悪口ではありません。良くも悪くも固定観念に縛られず、独自の考え方を貫いている人たちにたくさん出会ってきました。旅は一期一会の連続で、そこでの出会いは全て奇跡と言ってよいでしょう。そんなたくさんの奇跡の中でも、僕が感じたコイツはヤバいという旅人5人をランキング形式でご紹介したいと思います。

第5位  電子機器を捨て去った孤高の旅人(エジプト)

 たまたま宿のドミトリーで一緒にならなかったら、恐らくこの方を知ることは出来なかったと思います。何故なら彼はSNSはもちろん、電子機器を何一つ持たずに旅をしていたのです。歳は30代中盤で一見長期の旅人っぽくない清潔感のある方でしたが、その時すでに旅を始めて5ヵ月目ということでした。スーツケースにスーツを入れていたのが珍しくて印象的でした。

「日本では寝るときもスーツ着てたんだよね。私服なんてほとんど持っていなかったし、いつもスーツ。今はもうこの1着しか持ってないけどね」

 なんでも日本ではIT系の会社で働いていたが、激務に嫌気がさして辞めてしまったのだとか。

「深夜特急って知ってる?通勤の電車の中で毎朝それ読んでてさ、もう突然だよね、ある日会社に着いてそのまま部長のデスクに直行して辞めますって言ったんだ。でも本当の所、旅がしたくって辞めたわけじゃあないんだよ実は。旅は言い訳なんだ。ただ休みたかった、仕事から距離を置きたかっただけなんだって旅に出てから気付いたよ。電子機器を持たないのも深夜特急に憧れただけじゃないんだ。俺はずっと電子機器にまみれて生活してきたからね、仕事を辞めるだけじゃこの疲れは取れないって思ってさ、それでスマホもパソコンも実家に置いてきたんだ。持ってる機械と言えばこれくらいかな」

彼は笑って腕時計を振ってみせました。

第4位 究極の断捨離男ビニーラー(カンボジア)

 僕と彼との出会いはカンボジアの日本人宿でした。その宿では(カンボジアでは?)停電が起きることが稀にありました。停電と言っても5分もすればすぐに電気は戻ってくるので大して気にもなりませんでした。

 ある日僕が宿の共有スペースでダラダラとお昼ごはんを食べていると、例のごとくバチッと停電しました。昼間なので電気は点けていませんでしたが、扇風機とWi-Fiが止まったので停電だとわかりました。僕が気にせずパクパクと炒飯を食べていると、奥からドタドタと走ってくる音が聞こえてきました。

「おい!水道も止まったんだけど!」

 突然、雑にタオルで前を隠した全身泡だらけの男が飛び出してきたのです。聞くと、お風呂で頭を洗っていた時に停電になり、おまけに水も止まってしまったとのこと。真っ暗な中泡だらけでじっとしていると、居ても立っても居られなくなって飛び出してきたのだそうです。

 そんな彼ですが、興味深いのはその荷物です。僕は荷物の少なさにかなり自信があり、「荷物少な!」と言われることに快感を覚えるのですが、彼の荷物量には流石に勝てませんでした。何故なら彼の荷物はビニール袋にシャンプーと石鹸、歯ブラシのみなのです。

「いやー1ヶ月前くらいにバックパック盗まれちゃってさ。でもなんか意外とこれだけでいけるわ」

絶対いけないと思いましたが、財布とスマホはポケットに入れていたのでなんとかやっていけてるのだそう。

「服は1ドルで安いし、タオルも借りれるし、困るのはパンツだけかなーあはは」

いやバックパックも安いし買えよと思いましたが、彼はそのままのスタイルで東南アジアを周遊したそうなので大したもんです。

第3位 大事な部分がとれたレズビアン(タイ)

 タイのソンクラーンという水かけ祭りのことはご存じでしょうか。そのお祭りの間は人に水をかけても良いということで、街中に水鉄砲やらバケツらやらを持った輩が現れるお祭りです。突然背中から水を浴びせられることもあるので注意が必要な期間でもあります。彼女とはそんな時期にゲストハウスで出会いました。とにかくクレイジーなライフスタイルで面白い方でした。生粋のレズビアンで可愛い子がいると割とガチで手を出そうとするので、一緒に来ていた友達が何度も止めていました。

「タイって蒸し蒸ししてるじゃん?だからあたし、1日5回くらいシャワー浴びてたの、宿帰る度にね。で、結構強くゴシゴシ洗ってたの。そしたらね、右側の乳首がポロってとれちゃったの!」

 赤裸々に語る彼女の話に宿のみんなも興味津々です。

「それでさ、まあ病院行かないといけないじゃない?で、あたし一応日本語で対応してくれるところにしようと思って電話かけたの。そしたらさ、電話口の子の声がめちゃくちゃ可愛くて、あたしなんか恥ずかしくなってきちゃってさ。乳首って言うのがね。それでね、ティクビがーちょっと取れちゃってーって言ったの!ティクビ!でいざ病院に行くじゃない?受付で名前呼ばれて、そしたら手首がどうされましたかって言われて!あ、手首じゃないです。乳首です。ってもー恥ずかしくて恥ずかしくて!」

 そんな彼女ですが、誰もが知る大企業に勤めていた英語ペラペラのスーパーエリートでした。

第2位 自転車で世界放浪7年の58歳(インド)

 僕は1つの持論があります。それは「ブログやSNSに発信していない旅人の方がヤバい」ということです。僕の出会ってきたヤバい旅人は大抵どこにも発信せず、我が道をまっしぐらに突き進んでいました。そしてこの方もそんな旅人たちのうちの1人です。

 彼は自転車で世界、主にアジア~中東を旅しており、なんと7年間日本に帰っていないということでした。彼はスパイスに興味があり、美味しい食べ物を見つけると厨房まで入っていってその調理している様子を見学し、時には調味料を売ってもらったりするのだそうです。

 僕がインドのカフェでダラダラとチャイを飲んでいた時、彼に話しかけられたのがきっかけで知り合いました。

「なんか美味しいご飯屋さん知ってる?」

 僕はその町で一番お気に入りだった炒飯の屋台に彼を連れて行きました。幸いなことに彼はその炒飯を大いに気に入ってくれました。

「ええ、何これすごい美味しい!満席な理由も分かるね」

 食べ終わった後、彼は調理しているインド人と何やら話を始め、炒めている様子を写真に撮ったり、裏にある調味料を見せてもらったりしていました。僕はそんな彼をボケーと見ていたのですが、不意にショックを受けたような呆れたような顔をして彼が席に戻ってきたのです。

「味の素使ってやがる。そりゃうめーわ」

 彼の首を振って肩をすくめる姿を今でも思い出します。

第1位 ジャンキー(ネパール)

 ネパールでは以前大きな震災があったことを覚えているでしょうか。当時は世界的に大きく報道されましたが、おそらくほとんどの人がすでに忘れてしまっているのではないでしょうか。その爪痕は今でも大きく残っており、未だに建物が倒壊していたりテントで生活している人たちがいます。

 僕がその人に出会ったのは震災直後のネパール、安いホステルの共有スペースでした。気の良いお兄さんという感じで、歳は僕より1つ上、話を聞いてみるとなんと航海士をやっていたのだそうです。下着が見えるほどボロボロのジーパンに肩まではだけたよれよれのTシャツ、髭を生やし、髪の毛は肩まで伸びており、THEヒッピーという感じの出で立ちでした。常に大麻を口に加え、宿の中をウロウロとしていました。

「もうさ、どーでもいいんだよね。一度いくところまでいかないとダメなんだ。真っ暗な穴に落ちている真っただ中って感じ、分かるかな。底に辿り着かないと跳ね返って来られないんだよ……。そういえば俺にはさ、君くらいの弟がいるんだ。今何やってるのかも分かんないんだけどさ。そうそう、俺の連れの女、どう思う?」

 ある日僕と彼を含めた数人で雑談をしているとき、不意に宿のオーナーがやってきて何かを彼に渡しました。僕が首を傾げていると、彼はにやりと笑って言いました。

「一度しか誘わないよ。ヘロイン、やる?」

 その日の夜、彼がお風呂場でゲーゲー吐いていたのをよく覚えています。僕は次の日チェックアウトすることを決め、インドへと向かうことにしました。

「どっか行くの?」

 朝コソコソチェックアウトしようとしていると、彼が下りてきました。

「はい、インド行こうかなって」

「そっか……」

 それ以上何も言ってきませんでしたが、彼は寂しそうな顔で僕を見送っていました。

 正直、長く旅をしているとジャンキーのような人たちに出会う事もあります。大抵は目の奥が真っ黒で歪んだ笑みを向けてくるのですが、彼はどこか純粋で人を惹きつける何かを持っていました。願わくば彼を縛る何か、彼の言う真っ暗な穴から脱出していることを、そしてまたどこかでばったりと出会えることを期待しています。

最後に

 僕はまだまだ多くの「ヤバい」旅人たちと出会い続けており、正直ベスト5と括ったのは失敗だったかもしれないと思い始めています。それくらいにたくさんの強烈な人たちがいて、全員を数え始めたらきりがありません。今回は分かりやすくまとめるためにランキング形式でご紹介しましたが、いつかまた新たな旅人の紹介しようと思っています。

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