ヨルダンの首都であるアンマンへとやってきました。ここはムスリムの国ということでアラビアっぽい空気が充満しているのかと思いきや、街並みはどこか牧歌的で聖書の世界を思わせる雰囲気でした。バスに乗っていると羊の群れを連れた羊飼いやそれを追いかける牧羊犬、なだらかな丘には緑と花が彩っています。しかし街の中心地に来るとまたその雰囲気はガラッと変わり、ガヤガヤゴチャゴチャしている路地やレストラン街、道端に商品を並べて呼び込みなどをしている様子に景色は移ります。
市内近くの小高い丘の頂上に「シタデル」という昔の城塞があるということで、行ってみることにしました。タクシーを使っても良かったのですが、街から徒歩で1時間もかからないということだったので歩きました。結構な坂道を登ることになったので、行きはタクシーで帰りに歩くのが正解だと思いました。下り坂の方が眼下の景色を眺めながら歩けるのでオススメです。
入場料の3ディナール(460円くらい)を支払い中へ入ると、遠目に遺跡を確認できます。
遺跡の雰囲気は僕が今まで訪れたどの遺跡とも違いました。どこかヨーロッパ的というか、アジアや中東、アフリカのイメージとは少し違う印象をこの遺跡からは感じました。先程も言いましたが、聖書の世界観という表現が自分にはしっくりきました。
この遺跡だけではなく、ヨルダンの丘にはこの黄色い小さな花がたくさん咲いていました。ヨルダンに滞在中よくこの花に囲まれた場所に泊まったりカフェに入ったりしていましたが、不思議なことに花粉症の僕がクシャミ1つしませんでした。花粉の少ない花なんでしょうか。緑の丘や草原にマッチしていてとても癒されました。
遺跡に近づくとそこは例の如く撮影大会が開かれていましたが、観光客の数はそこまで多くなかったです。僕が訪れた時は、実際にこの下の写真に写っている人たちでほとんど全員といった感じです。
朽ちた遺跡という感じがたまりませんでした。なんでもとっても歴史のある場所らしく、なんと新石器時代から人類が住んでいた痕跡があったのだとか。何千年前も前から今現在にかけてここに人類が住み続けていることを考えると、何かしらのパワーを信じてしまいそうです。近くには出土品などを展示した小さな博物館もありました。
ヘラクレス神殿は2世紀頃に建築されたもので、調べてみるとローマに占領されていた時代に造られたものということでした。これでどこかヨーロッパ風であることの合点がいったと同時に、当時のローマがいかに広く世界を股にかけていたかを感じました。そしてここにはヘラクレスの手も展示されており、本体は一体どこにいったんだという謎があります。他の建造物に流用されたとか、倒壊して埋もれてしまったとか言われていますが、僕はもっとミステリアスな展開を期待しています(今ではどこかの大富豪の庭に飾られていたり?)。
このヘラクレス神殿は様々な時代で少しずつ再建されている痕跡が見つかっているそうです。遺跡を綺麗に修理すると「らしさ」が損なわれるので好きでなかったのですが、時代を跨いで再建され続けているというのはなんだかロマンがあります。
このヘラクレスの手ですが皆さんめっちゃ上手いこと写真を撮り、実際よりもかなり大きく見える写真がたくさんあります。僕のこの写真でさえ少し大きく見えているので、そもそも巨大に映りやすいのだと思います。しかし実物は割と小さかったです。何人かの観光客が失望していました。
奥へ進んでいくとウマイヤ朝時代の宮殿があります。これは8世紀頃に建てられた建築物だそうです。大分ヘラクレス神殿とは毛色の違う感じがしました。
丘の上は思ったよりも広く、草があちこちに顔を出している朽ちた遺跡の中を探検することができます。迷路のようにグネグネした道がありますが、迷うほどには入り組んでいません。ヘラクレス神殿を含め、ここにある遺跡には触ることができ、よじ登っている人たちもたくさんいました。ただしヘラクレスの手だけは囲いがあって自由に触れることは禁止されていました。
このアンマン城塞の素晴らしい点はこれらの遺跡だけではありませんでした。小高い丘の上にあるため、眼下の景色がとても素晴らしいのです。アンマンの街を一望でき、さらに遠くの景色にまで目を向けることができます。アンマンの街並みは想像以上に美しく、まるで絵本の中の世界のようでした。
丘の上からはローマ劇場も見下ろすことができました。遮るものがないのでどこからでも街の景色を眺めることができます。同じ色と同じ形の建物がどこまでも続いているのに、何故か画一的な印象はありませんでした。東京の団地やマンション、時には一戸建てまでもが個性無く無機質に見えたりしますが、ここでは不思議とそんな風には感じられませんでした。ゆっくり眺めているとあっという間に日が暮れてきます。夕暮れの時間帯になるとサンセットを見るためか、人の数も増え始めました。