ラオスに行くたびにバイクを壊している話

ラオス編

 ラオスという国をご存知でしょうか。僕は高校の世界史の授業で初めてその名を聞き、旅を始めて忘れかけていたその国の存在を思い出しました。東南アジア唯一の海を持たない内陸国、また同時に4千の島々を持つことでも知られる神秘の秘境です。 そしてとても穏やかで優しい人々の暮らす素敵な国でもあります。

 僕はこの国が大好きで何度か訪れたことがあるのですが、何故か毎回トラブルに出会ってしまいます。そのほとんどは自業自得であり、気を付けていれば避けられたはずのものばかりなのですが、何故かラオスへ来ると舞い上がり過ぎてかやっかい事を引き起こします。今回はラオスへ行ったら必ずレンタルするバイクにまつわるトラブルを2つ紹介しようと思います。

スマホもお金もバイクの鍵も盗られた話

 これは僕がラオスをバイクで縦断していた時に通りかかった「バンビエン」という魔村での出来事です。この「バンビエン」という村は岩山に囲まれた森の中にあり、宿とバーだけで出来上がっているような不思議な空間です。昔はヒッピーたちの集まる場所だったようですが、今では割と観光地化しているので怪しげな雰囲気は段々と減少していっています。

 僕はこの街で1つ、自分の中で決めていた旅の禁忌を犯してしまいます。それは「外国で喧嘩をしない」という自分ルールです。

 あるバーでのお会計の価格が僕が想定していたよりも少し高く設定されていたのが理由で、かなりの言い合いに発展しました。その時の僕は何故だかとてもカリカリしていて、思いつく限りの罵詈雑言をその店員に吐き捨てた挙句、お金を投げつけてその店を後にしました。向こうも相当に怒っていました。

 プンスカしながら宿まで早歩きしていると、僕はふとあることに気が付いてサーッと血の気が引いていきました。

「スマホ忘れてる……」

 確実にさっきのバーに忘れていました。そのバーの料理の写真を撮った記憶、そのバーのソファーにスマホを置いた記憶がはっきりと残っていました。さっきの店員の剣幕からして僕のスマホは床に叩きつけられていてもおかしくありません。急いで引き返しながら店員がまだ僕のスマホを見つけていないことを祈っていました。

「えー何が?」

 この世で一番しらこい顔をしながら肩をすくめる店員を絶望の眼差しで見つめる僕。正直iPhoneだけならくれてやるくらいの気持ちでしたが、僕はさらなるやらかしを犯していました。

「分かった、スマホはやるよ。なんならカバーに挟んであった200ドルもくれてやる。でもバイクのキーは返してくれよ!頼む!!それお前には必要ないだろ!!」

「そんなこと言われてもまずスマホなんか見てないもんね」

 完全に終わったと思いました。そうです。僕はスマホのケースにレンタルしていたバイクのキーをくっつけていたのです。僕はiPhoneと200USDとバイクのキーを一度に失ったのでした。

 僕は宿からバイクを引きずり出し、なんとか近くの修理屋に持っていきました。状況を話すと、修理屋の親父がにやりとして言いました。

「ぶっ壊すしかないね、鍵を変えてやるから明日また来な」

 そんなことが簡単に出来ていいはずがないと思いました。だって、もしかしたら僕がその辺から盗んできたバイクかもしれないのに、そんな簡単に鍵をほいほい交換していたら……。しかしながら、とにかくその親父のお陰でなんとか無事にバイクをレンタル屋に返却することができました。レンタル屋に状況は説明しましたが特に何も言われませんでした。

 バイクの弁償代10万円は免れましたが、僕のiPhoneとバックアップしていなかった道中の写真や連絡先は全て失われました。高い勉強代になりましたが、それから外国で喧嘩をしたことはありません。

バッテリー交換と村人の優しさと100万のお支払い

 前回バイクの鍵を無くしたクセに、今回もまたバイクを借りました。縦断はしませんでしたが、バイクは行動範囲が広がるのでとても便利なのです。

 首都ビエンチャンに向かう途中、バイクのエンジンが突然切れてしまいました。ラオスは自然豊かな国です。都市部以外は農村がポツポツとあるくらいで、修理を頼めそうな施設は見当たりません。困り果ててバイクを押していると、遠くから様子を見ていた村人が声をかけてくれました。お互い言葉は分かりませんがなんとかなるもんで、バイクに詳しいっぽい兄ちゃんの家まで案内してくれました。バッテリーがダメになっているということで取り換えてもらい、バイクはすぐに復活しました。料金を聞くと驚くほど安かったので、チップを上乗せして渡しました。

 感謝感謝でその村を後にしたのですが、一時間後くらいでまたバイクのエンジンが止まってしまいました。そして案の定近くの村までバイクを引っ張って行ってバッテリーを交換します。なんとそんなことがまた何度も続き、トータルで4回バッテリーを買い替えるハメになりました。最後にエンジンが止まった時には辺りに村はなく、たまたま通りかかったトゥクトゥクを死ぬ気で止めてバイクごと町まで運んでもらいました。

 村々では安く交換してもらえたバッテリーですが、町ではとんでもない料金を請求されました。お値段なんと100万キップ!当時のレートでおよそ1万4千円。ラオス人の平均月収の2倍近い金額です。足元を見られまくってますね。村人たちは優しかったけれど、町にまで出ると商魂魂えげつないです。そもそもこのバイク自分のものじゃないし、レンタル屋に責任を取らせたい気持ちでいっぱいでした。しかし、なんとしても今日中にビエンチャンの空港へ着かなければならなかった僕にごねている余裕はありませんでした。

 町では何か根本的な修理をしてもらえたようで、それから壊れることはありませんでした。レンタル屋の親父に事の成り行きを話すとバッテリー代を支払ってはくれましたが、ほんの数百円でした。ぼったくられた分は知らんよと涼しい顔をしています。引っ叩きたい衝動を呑み込んで空港へと向かいました。

最後に

 これらの教訓は「外国で乗り物をレンタルしない」では決してありません。バイクでのツーリングや車でのドライブは旅をさらに楽しく素敵なものに彩ってくれます。僕の得た教訓は「挑戦に失敗はつきもの」ということと、言わずもがな「外国で喧嘩はご法度」です。もしバーで僕が店員と仲良くなっていたら、恐らく何も失わずに済んでいたと思います。

 そんな風に失敗を重ねているうちに学んだことをまとめているので下に置いておきます。最後まで読んで頂きありがとうございました!

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