ニュージーランドの田舎道で車が煙を噴いて故障した話【ワーキングホリデー】

ニュージーランド編

 ニュージーランドで僕は主にファームジョブでお金を稼いでいました。オーストラリアのファームはあまり良い噂を聞きませんが、ニュージーランドでは騙されることも、悪徳な業者に出会うこともなく良い想い出ばかりをつくることができました。そんな楽しい楽しいワーホリライフだったんですが、1つだけ苦い経験をしました。これを読んでいる方がそんな状況に陥らないように、または笑ってもらえれば僕の経験も無駄にならなくて済むので幸いです。

始まり

 ニュージーランドのワーキングホリデー中一番長く滞在していたのが「ヘイスティングス」という町でした。 この町で僕は、マオリ族のおっちゃんのフラット(空いている部屋の間借り)に住んでいました。このおっちゃんがかなり気さくで、一緒にボードゲームをしたりパイを焼いてくれたりとても良くしてもらいました。

 ある日の日曜日、おっちゃんが友達と近くの山までドライブに行くからお前も来ないかと誘ってくれ、僕とさらに日本人の友達も一緒に合計4人でドライブに出かけました。

 後部座席に座り、車の窓を開けて山道の景色を楽しんでいると、友達があることに気が付きました。

「なんか焼き畑してない?」

「えーニュージーランドでも焼き畑とかするんだね。でも煙は上がってないね」

 そんなことを話していると、すぐに真っ黒な煙が上がったのです。僕たちの乗っている車から!

 おっちゃんの友達の車なのですが、見るからにボロボロだったのできっと山道に4人乗りは厳しかったのでしょう。すぐに車を止めて全員車の外に飛び出しました。20キロ以上は走ってきましたが、この時僕は徒歩での帰宅を覚悟しました。

 おっちゃんとその友達が車のボンネットを開けて何やらゴソゴソとしている間、僕は友達とへらへら雑談をしていました。

「車から煙が出るところ初めて見たよ」

「焼き畑じゃなくて車の焦げた匂いだったとはね」

 この会話が後のフリになっているとは全く予想だにしていませんでした。

 とにかくその時は何故か車は直り、僕は一度煙を吐いた車に乗り続けることにおっかなびっくりしながらもその日は楽しく終わったのでした。

 

上機嫌

 ヘイスティングスはファームの季節になると色々な国からワーホリメーカーたちが仕事を求めてやってきます。当時僕はブルーベリーピッキングの仕事をしており、毎日バスで農場まで通っていました。かなりおすすめのファームジョブで、それについてはコチラで紹介しています。

 基本的にファームジョブには車が必須なのですが、ここは農場までバスの出ているかなり珍しい会社でした。しかし僕は次第に、決まった時間にしか使えないバスではなく、自由に車で通いたいと思うようになっていきました。ブルーベリーのシーズンが終わっても別のファームジョブを考えていたので、どちらにしても車は必要だったのです。

 遅かれ早かれ買うならば早い方がいいだろうと考え、早速ニュージーワーホリの便利サイト「ニュージーランド大好き」で良い感じの中古車を探し始めました。予算的にはそこまで高い車は買えないので、割とオンボロな車になることは覚悟して探していました。そして出会ったのが「1996年購入、トヨタのエスティマ、距離数22万キロ、1800ニュージーランドドル(当時で15万円くらい)」という車。走りすぎだろ!と思われるかもしれませんが、ニュージーランドでは30万キロとかの車もざらに走っていますし、50万キロとかもいます。僕の当初の条件は「25万キロ以内、2000ドル以内、2000年以降に購入していること」だったのですが、買っちゃいました。座席に座ったら欲しくなっちゃったんです。

 ちなみに車を探すときの注意点ですが、なるべく新しい型のものを買った方がいいと思います。自動車整備士の友達が言っていたのですが、「極論、距離数よりも年数」だそうです。「しっかりと車の面倒を見ていれば年数が経っていても大丈夫だけど、素人は何もしないから年月が経っている方が怖い」とのことでした。

 とにかく僕は人生で初めて車を購入したので有頂天です。オークランドで受け取った後、そのままドライブも兼ねてヘイスティングスまで車を走らせました。やはり知らない土地で見たことのない景色を眺めながらドライブは最高です。

悪夢

 車を手にした無敵の僕は、当然バスを使うことなく車を使ってブルーベリーの農場へと通っていました。 そしてある日、僕は愛車の異変に気が付いたのです。僕は車の知識はほぼゼロだったのですが、水温計のメーターがHにすぐ振り切るのです。

 車の知識ゼロでもこれが良くないことは分かりました。調べてみると、車を冷やすクーラント液が少なくなっているんじゃないのかという仮説にいきつきました。ボンネットを開けて確認してみると、その容器は見事に空っぽでした。急いで近くの車屋でクーラント液を購入して容器をいっぱいにして、事なきを得ました。得たと思っていました……。

 ブルーベリーの季節も終わりに近づき、僕はキウイフルーツの仕事を手に入れるために「テプケ」という町に行くことにしました。ヘイスティングスからはおよそ300キロ弱の距離にあり、ちょっと長めのドライブになります。テプケの最高なキウイジョブについてはコチラ。

 滑り出しは順調でした。音楽をかけながらご機嫌で車を走らせていきます。ちなみにこの時に既に水温計のメーターのことは気にならなくなっていました。クーラント液を入れたのにも関わらずメーターは振り切り続けるので、これはもうメーターの故障なのだと思っていました。

 ゆるやかな坂道に差し掛かった時にふと既視感、いや既臭感を覚え、どこで嗅いだ匂いだったのか頭をひねりました。

(なんか、近くで焼き畑でもしてるのかな……)

 刹那、車のダッシュボードから見たことのないランプが一斉に光りだし、ボンネットから黒煙がモクモクと立ち昇ったのです!

 泡を食って車から飛び出し、その場から離れて遠目に車を観察していました。今にも爆発すると思ったのです。それくらいの量の煙が出ていました。

 しばらく遠目から見守っていましたが、当然の如く爆発はしませんでした。ボンネットを開けてみると、クーラント液を入れる容器が空になっていることに気が付きました。後でわかったことですがどこかの管に亀裂があり、クーラント液が漏れ出てしまいすぐに容器が空になっていたのです。

 追い打ちをかけるように雨が降り始めました。

その後

 とにかく車(エンジン)を冷やさないといけないと考え、道行く車を止めてミネラルウォーターを分けてもらい、ひたすらクーラント液の容器に流し込みました。いくら入れてもいっぱいにならないその容器に絶望しながらも(管に亀裂があるのでそのまま地面に流れ落ちていた)、車に水を飲ませ続けました。30~40台は止めたと思いますが、ニュージーランド人は本当にみんな親切です。わざわざ引き返してきてくれる人たちや、雨の中外に出てきてボンネットに頭を突っ込んで調べてくれる人たちまでいました。

 そして試しに動かしてみると、動くではありませんか!しかし、スピードを出すとすぐにまたエンジンが切れてしまいます。ゆっくり進んでいても少しするとすぐにまたエンジンが切れてしまいます。その度にまた外へ出て色んな人たちの車を止めて水をもらうという行為を、売店のある場所に行きつくまで繰り返しました。

 ようやく売店を見つけると、2リットルのボトルをほぼ買い占める勢いで購入しました。そしてなんとか湖で有名なタウポという町にまでこぎつけたのでした。車の整備工場に持っていくと、「エンジンがオーバーヒートしており、もう使い物にならない。交換するとなると3000ドル以上かかる」とのことだったのでスクラップにしてもらいました。

 今回は僕が自動車を知らなかったが故に起きたまぬけな例ですが、中には最初から欠陥があるのを分かっていて販売する詐欺師のような人もいるそうです。僕の知り合いに3台車をダメにした人がいますが、購入の際は十分に気を付けて、できれば詳しい人をつれていくことをオススメします。

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