インドネシアのジャカルタで出会った暇な旅人たち

インドネシア編

 インドネシアのジャカルタはとっても暇です。

 やることがないのです。観光できる場所がないわけではないのですが、大都市すぎて旅行でのんびりという風にはいきませんでした。同じ大都市ならタイのバンコクの方が異国情緒的にも、楽しさ的にも軍配が上がります。

 僕はジャカルタで次の国へのフライト待ちをするだけの存在に成り下がっていたのですが、僕と同じように暇に暇を重ねてダラダラしている旅人は少なくありませんでした。ゲストハウスで彼らに出会えたことが救いで、毎日とるに足らないしょうもない話で盛り上がっていました。

 今回はそんなジャカルでの出会いをいくつか紹介しようと思います。

 

お尻真っ青の生意気大学生

 彼はある有名な大学の学生で、就活も終わり人生最後の夏休みということで東南アジアを旅していました。

 とにかくお喋りで、自信満々のお調子者という感じで、言うことがいちいち鼻につくのにどこか憎めないお得な性格をした奴でした。見た目は地味で黒髪メガネにヒョロい体型なのですが、その外見とは裏腹にかなりの野心家でした。

 

 「僕はね、自分の力で稼ぎたいんすよ。なんかで起業しますよ。絶対。お金が稼げればなんでもいいんですけど、何かITとかでやりたいすね」

 「金が稼げればなんでもいいの? パン屋とかどお?」

 僕はたまたまジャカルタで美味しいパン屋を見つけて通っていたので尋ねました。

 「んーパン屋じゃあないんですよね。僕がやりたいのは。なんかこう、社会にインパクトを残したいんすよ。めっちゃ本とか読んでますよ。今度そういうセミナーとかにも参加しようかと思ってます」

 「何の本読んでるの? ハリーポッターとか? あ、だから黒髪でメガネなのか?」

 そんな感じでみんなにはあしらわれていましたが、どこか人に好かれる雰囲気を持っていたので可愛がられていました。

 ちなみに今は営業でバリバリ頑張っているみたいです。

 

THE 長期放浪者感丸出し男

 一番一緒につるんでいた男です。

 長髪を後ろで結び、好き放題に生えたヒゲとメガネという格好で、当時の僕と割と同じような見た目をしていました。日本人の長期放浪者は大抵そんな感じに落ち着いて行くのです。結んだ髪とヒゲが鉄板です。

 彼はヨーロッパの旅を終え、日本に帰国する前に東南アジアでゆっくりしているところでした。良い意味でめちゃくちゃYESマンで、何に誘っても「オッケー!」と笑いかけてくれる良い奴でした。ただし、お金のかかることに対しては「オッケー! 奢りなら!」と調子良いこと言ってきます。

 一週間ほど一緒にいた中で発見したことは、「オッケー!」のラインは安めの日本食レストランに誘ったとき。「オッケー! 奢りなら!」のラインはシーシャ(水タバコ)に誘ったときということでした。

 彼は今もどこかの国を放浪しているみたいです。

 

冷静沈着でクールな歯科助手

 1年に1回1ヶ月のお休みをもらえるという歯医者で働いている歯科助手の人とも出会いました。

 彼女は冷静沈着という言葉の似合うクールな性格で、僕らのお喋りをそばでジッと観察しているようなタイプでした。たまに鋭いツッコミをしてくるので、それが中々堪らない僕は隙あらば突っ込まれようとボケていました。

 僕とライバルだったのは例の尻の青い大学生で、彼も負けじと彼女のツッコミを受けようと必死になっていました。彼とも話し合ったのですが、僕らは別にドMというわけではないのに彼女はその辺の何か秘められた欲求をくすぐる力があります。

 「私の付き合う男みんなドMなのよねえ」

 と話していましたが、僕と大学生は内心であなたが育て上げているのではないだろうかとツッコミを入れていました。しかし、彼女に直接ツッコミを入れるなど恐れ多いので黙っていました。

 ミステリアスな人でしたが、旅の話は興味深くて面白かったです。

 

世界一周中の倦怠期カップル

 世界一周をしているカップルや夫婦にはたくさん出会ってきましたが、このカップルほど倦怠感を醸し出しているカップルはいませんでした。

 基本的に2人でいるのですが、2人で目を合わせて会話をしている場面を見たことがありませんでした。みんなで雑談しているときも、2人はいつもバラバラに会話を進めていました。

 その雰囲気にみんなが少し気を使い出しているのがもどかしく、僕は試しにその辺りを突いてみたのです。

 「O君とYさんて仲悪いのによく一緒に旅続けてますよね。あははは」

 その場の空気は凍り付き、一瞬の沈黙の中でカップルは初めて顔を見合わせています。そうなることは分かっていつつ、どうして突っ込んでみたかったのです。

 すると2人はせきを切ったように互いの愚痴を吐き出し始めたのです。

 「この人マジで英語話せないから全部アタシに押し付けてくるんだよ?」

 「Yの荷物の半分以上は俺が持ってるからね? なんなら荷物の8割Yのだから」

 みたいな感じです。さっきまで凍りついていたみんなの顔は「面白くなってきやがったぜ」みたいな感じになっています。

 

 ちなみに2人は世界一周後に結婚しており、見た目以上に強い絆があったようです。

 

最後に

 実際はまだ何人かの旅人と出会っているのですが、今回は特にパンチの効いた人たちをピックアップしました。

 旅人紹介の記事は他にもまとめているので↓↓をどうぞ。

 

 最後まで読んで頂きありがとうございました!

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