エジプトには砂漠のイメージがありますが、実際に訪れる人は少数派のようです。ピラミッドや遺跡にだけ注目して、とんでもない絶景の広がる砂漠をスルーしてしまうのはもったいないです。砂漠はどうしても個人で周ることができないのでツアーを申し込みましょう。カイロに泊まっているのであれば、どのホテルでも砂漠ツアーの手配はしてくれます。ツアーの内容は基本的に「一泊二日、ブラックデザート(黒砂漠)、ホワイトデザート(白砂漠)」となっていますが、クリスタル砂漠にもよってくれます。少しでも価格を抑えたい方は「バハレイヤオアシス」まで自力で行き、そこからツアーを申し込むという手もあります。カイロからバハレイヤオアシスまではおよそ370km。グーグルマップでは4時間30分程となっていますが、僕が乗り合いタクシーで行った際には5時間以上かかりました。
2時間も車に揺られていると外はすぐに砂漠の景色に変化していきます。段々と建物の感覚が広くなっていき、じきに建物が街のものとは全く違う姿かたちになってきます。しかし僕はこの時かなり不安でした。「上手く現地でツアーガイドと落ち合うことができるのだろうか?もうお金は払ってしまっているし、バハレイヤオアシスについて誰もいなかったらどうしよう……」
バハレイヤオアシスの小学校の前で降ろされ、現地の子供たちにわらわら囲まれて騒がれていると、無事ガイドがやってきました。もしこのまま取り残されてしまったらどうしようかとヒヤヒヤしていましたが大丈夫でした。
僕の他にもツアーの参加者は5、6人いて、何人かはバハレイヤオアシスに泊まっていたようでした。軽い昼食を取り出発です。まず初めに辿り着いたのは黒砂漠です。バハレイヤオアシスから30分くらいで着きました。
ガイドさんが「砂漠では10秒に1回水が飲みたくなる」と言っていましたが、確かにすぐカラカラに喉が渇いていきました。
砂が黒いのかと思っていましたが、黒いのは無数にある石や岩でした。黒砂漠は意外と広く、中でも特に黒い石や岩の多いエリアに連れて行ってくれます。かなり良いカメラを持ってきている人がいて、彼は僕たちよりかなり離れた場所にまでトコトコと歩いて行って写真を撮っていました。上手い角度で砂漠全体が真っ黒に見えるようなトリックショットを見せてもらい、上手いもんだなあと思いました。
次に向かったのはクリスタル砂漠です。こちらの砂漠はもしガイドさんとの合流が遅れたり、何かしらでツアーが遅延することがあると省かれてしまうこともあるそうです。ちなみにですが、黒砂漠を出た辺りから僕はサングラスを持っていないことをかなり後悔しました。砂漠はめちゃくちゃまぶしいのでサングラス必須かと思います。特に白砂漠では特に光の照り返しがえぐいです。
写真を見て頂ければわかる通り、クリスタル砂漠は完全に名前負けしています。観光客が少しずつクリスタルを持って帰ってしまうせいで、今ではかなり禿山のような感じになってしまったんだとガイドさんが言っていました。昔は砂山1つ丸々クリスタルがぎっしりだったんだとか。そういえば僕がこのツアーを予約したホテルの受付にもクリスタルデザートのクリスタルがいくつか置いてありました。
お次は砂漠ツアーのメイン、白砂漠です。ここも僕は初め砂が白いのかと思っていましたが、白いのは岩です。しかし黒砂漠とはまた少しテイストの違う感じで面白いです。そこら中に不思議な形をした白い岩があり、まるで地面から生えて来たかのような、誰かが置いて行ったかのような何とも言えない奇妙な光景が広がっています。
まるで異世界、異空間でした。もしふと気づいたらここにいた、なんて状況があったとしたら僕はまずここが地球かどうか疑います。宇宙人に変装した人がここは別の惑星だと言ってきたら、おそらく信じると思います。
白砂漠を一通り周ると、ガイドさんはそこでキャンプの準備を始めます。辺りは視界を邪魔するものは何もなく、ゆっくりと沈んでいく夕日を眺めることができます。白砂漠にあるいくつかの岩にはよじ登れるものがあり、そこに登って見る夕日は格別でした。たまに動物の足跡やフンを発見しますが、本当に生物が存在しているのか疑いたくなるような空間です。
途中少しだけ手伝いましたが、ガイドさんは基本的に全て一人でテキパキとキャンプ、寝床作り、夕食、そして片付けの作業を終わらせていきます。夕食はたっぷりの野菜を煮込んだスープとエジプト風チキンライス、そしてめちゃくちゃでかいチキン、バナナでした。このチキンがまあ大きくて、イタリア人の老カップルはほとんど残していました。
ガイドさんは残ったチキンをその辺にポイッと放り投げました。どうゆうことだろうと思っていると、しばらくしてどこからともなく、フェネックが姿を現したのです!かなり臆病で、人間には全然慣れていない様子でした。それでもご飯が欲しいのか遠くからこちらの様子を伺いながらゆっくり近づいてきます。横歩きしながら警戒するその姿はめちゃくちゃ可愛かったです。
僕が見つけた足跡やフンは恐らくこいつらのものだったのでしょう。ガイドさんは最後に残った残飯を全て少し離れた場所に捨てており、翌朝確認したらほとんど全部なくなっていました。フェネックたちの夕ご飯になったのでしょう。
砂漠の夜はかなり冷え込み、寝袋を貸してもらえるとはいえ防寒対策は必須です。しかし夜空を見上げると寒さなんて吹っ飛ぶような景色が光り輝いています。天の川はその姿をはしたないと感じるぐらいにさらけ出し、流れ星が小さな子供みたいにそこら中を走り回っています。月が消えてからが星空の本番だと感じました。何故なら月はこの空にはまぶし過ぎるのです。
砂漠で満点の星空を眺めながら眠る経験は、最高の思い出の1つとなりました。
皆さんも是非エジプトへ来た際には砂漠ツアーも検討してみてはいかがでしょうか。度肝を抜かれること間違いなしです。その際には防寒具とサングラス、たっぷりの水分をお忘れないように!
ではでは